衆議院議員 井上義久
平成10年4月24日 衆議院本会議

○井上義久君
 新党平和の井上義久です。平和・改革を代表し、ただいま議題となりました建築基準法の一部を改正する法律案並びに関連をして我が国の住宅政策について、橋本総理並びに建設大臣に質問をいたします。
 初めに、我が国における住宅政策のあり方について、総理並びに建設大臣の見解をお伺いいたします。
 我が国の住宅事情は、ウサギ小屋等とやゆされるがごとく、欧米先進国に比べてかなり劣悪な状況にあることは周知の事実であります。一人当たりの床面積で比較すると、アメリカの六十平米に比べ、我が国は三十一平米とおよそ二分の一の水準にとどまっております。特に借家の一戸当たり床面積は、アメリカの百十一平米、イギリスの八十八平米、フランスの七十七平米に比して、日本は四十五平米と著しく劣っており、豊かさを実感できる水準には遠く及ばないと言わざるを得ません。
 十二年前の一九八六年、OECD経済協力開発機構は、我が国に対する都市政策レビュー勧告で、日本の住宅ストックはOECD諸国に比べ低水準にあり、これを改善していこうとするならば、日本政府は住宅問題をもっと優先的に扱う必要があるとの指摘を行いました。それ以降、我が国でも種々の住宅政策が打ち出され、居住水準の改善が行われてきているものの、日本の国民総生産及び一人当たりの国民所得を考えると、住宅に関して言えばいまだに生活小国と言わざるを得ないのが実情であります。
 憲法第二十五条の生存権及び国の社会保障的義務規定を受ける形で、公営住宅法は、健康で文化的な生活を営むに足る住宅を建設しと居住権の保障をうたっております。公営住宅はもとより、個人住宅においても健康で文化的な生活を営むに足る住宅に居住することは国民の基本的人権の一つであると明確に位置づけた上で、それを保障するような国の住宅諸施策を展開することが重要であります。
 しかしながら、我が国のこれまでの住宅政策は、個々人の住宅確保を自己責任に帰し、一方、購入すべき住宅の価格は市場原理にゆだねたままにしてきました。その結果、経済大国であるにもかかわらず、豊かさを実感できない我が国の住宅事情がつくり出されたのではないでしょうか。人生を謳歌するための基本的な拠点であるはずの住宅確保のために二十年から三十年もの長きにわたって重いローンを背負わなければならないこと、さらに、ローン返済の破綻が人生の破綻に直結するような状況は異常な事態と言わざるを得ません。
 総理、生活大国を標榜するのであれば、優良な住宅に居住する権利を基本的人権の一つとして位置づけること、そして住宅の確保を自己責任と市場原理にゆだねてきたこれまでの住宅政策を抜本的に改め、国の責任を明確にした積極的な住宅政策に転換すべきではないでしょうか。生活大国を実現するとの観点から、我が国の住宅政策の現状をどう考えているのか、また今後の課題としてあるべき我が国の住宅政策についてどのような認識を持っておられるのか、橋本総理の御見解をお伺いしたいと思います。
 さきに述べましたように、廉価で優良な住宅を国民に供給することは、基本的人権を守る国の責務と考えます。住宅政策を遂行していく上で、達成目標とともに、客観的な指標が必要ではないかと思います。我が国における住宅の豊かさの指標、また住居費負担はどの程度が適正と考えているのか、さらにどのような住宅が優良な住宅と考えているのか、建設大臣の御見解をお伺いしたいと思います。
 次に、今回提案されております建築基準法改正に関連して、何点か政府の見解をお伺いしたいと思います。
 平成七年一月十七日に発生した阪神・淡路大震災は、平成八年の消防白書によれば、死者六千三百十人、全壊家屋九万三千百八十一棟、半壊家屋十万八千四百三十九棟という大変大きな被害をもたらしました。今なお、二万世帯を超える家族が仮設住宅で不自由な生活を余儀なくされており、また被災者の多くが崩壊した生活基盤を回復できずに苦しんでおります。後で述べますけれども、この震災による家屋倒壊の原因の一端が国の施策にあったことを考えますと、住宅の確保や生活支援金の給付など、被災者の生活支援対策を速やかに実施すべきであると考えますが、総理いかがでしょうか。
 この阪神大震災の被害について、警察発表では、死者の八九%は倒壊家屋等の下敷きになり圧死、とりわけ木造家屋の圧死事故が多かったとのことであります。その原因については、筋交い不足、壁配置の偏り、基礎部の接合不備等々施工上の構造欠陥ではないかと指摘する声もあります。一方、構造審査が比較的厳しい木造三階建て個人住宅は、相当厳しい揺れがあった地域でもほとんど無傷で残っていたとの報告を勘案いたしますと、同震災における家屋倒壊の原因は、単に都市を直撃した異常な地震力のみではなくて、建築基準法あるいはその運用に瑕疵があったのではないかと考えることが自然であります。
 建築基準法は、その一条にその目的として「建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図り、」このように定めております。国民の生命を守るという最も重要な目的を建築基準法は達成できなかったと指摘せざるを得ないのであります。今回の中間検査制度の導入等の建築基準法の改正は、この阪神・淡路大震災の反省の意を含んだものと理解しておりますけれども、総理の見解をお伺いしたいと思います。
 関連して、今回導入される中間検査制度について、何点かお伺いしたいと思います。
 多額のローンを背負い、やっとの思いで建築、購入した我が家が、欠陥住宅とわかったときの被害者の衝撃と精神的苦痛を考えるとき、今回改正の中間検査制度の導入は大きな前進であります。建ってしまってからでは、その欠陥は判断しがたいというのが住宅の特性であります。それを考えますと、事前の建築確認、完成時の完了検査とあわせて、建設途中における中間検査制度の導入は、住宅の施主や購入者にとって大いに歓迎すべき制度であると思います。
 しかしながら、同制度の内容を吟味いたしますと、今回の制度は、大きく二つの点で骨抜きになっているのではないかとの懸念を持たざるを得ません。その一つは、すべての建築物に中間検査を行うのではなく、特定行政庁の指定する区域、期間、建築物の構造、用途、規模を限りという限定つきの導入であることであります。もう一つは、戸建て住宅の中間検査は、建築士の監理報告書の提出によって一部簡略化されていることであります。
 欠陥住宅を防ぐには、先ほども指摘しましたように、建ってからでは既に遅いわけでありますから、したがって、中間検査は、あらゆる建物、特に個人が主に購入する戸建て住宅に関してはぜひとも必要な制度であります。にもかかわらず、せっかくの制度から大骨二本が抜かれ、結果として名ばかりということになってしまったのでは、制度を導入する意味はありません。
 なぜ中間検査の対象を限定的なものにしたのか、明確な御答弁をいただきたいと思います。また、将来的にすべての建築物を中間検査の対象とする方向を考えているのかどうかも、あわせてお答えをいただきたいと思います。
 次に、建築確認検査の民間開放についてお伺いしたいと思います。
 今回の改正の背景として、建築物の着工件数に比べ、建築主事等の職員の絶対数が不足し、完了検査や違反建築物の取り締まり等を的確に行うことが困難な状況にあることが挙げられております。このことは、違反建築が常態化し、欠陥住宅が横行していることの証左でもあります。このような事態について、政府はどのような認識を持って今日まで建築行政を進めてきたのか、またなぜこれまでそういう状態を放置してきたのか、その責任についてどう考えているのか、建設大臣の明確な見解をお伺いしたいと思います。
 また、建築確認検査の民間開放については、指定確認検査機関の中立性、公平性が第一の問題であります。建設省の案では、公正中立な民間機関を指定することとなっておりますが、建設省が示しております指定要件では、ゼネコンやハウスメーカーの何社かが集まって指定確認検査機関をつくることができるようになっております。また、同機関は株式会社でもいいということでありますけれども、営利目的で活動することを考えますと、公正中立な確認検査が本当に担保されるのか、お手盛りの建築確認検査で今以上に違反建築や欠陥住宅がふえるのではないかとの懸念も指摘されております。
 こうした民間開放に伴う懸念に対して大臣はどのような見解をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。また、どう公正、中立性を担保していくのか、あわせて運用方針についてもお伺いしたいと思います。
 次に、建築基準の性能規定化等基準体系の見直しについてお伺いしたいと思います。
 建築技術の革新や規制緩和の観点から、性能規定化は評価できると考えております。しかしながら、性能基準を確認するための検証方法が確立されておらず、やり方によっては安全性に欠ける住宅ができ上がってしまう心配があります。こうした懸念について建設省はどのように考えているのか、お伺いしたいと思います。
 最後に、総理に、補正予算、経済対策について、住宅関係に絞ってお伺いしたいと思います。
 冒頭でも述べましたが、良好な居住環境を整備することは国民の基本的人権を守る国の責務であるという立場に立って、住宅政策に取り組むべきだと考えます。
 特に、今回の経済対策では、少子・高齢化社会に対応した多様な住宅政策を推進すべきと考えます。具体的には、一つは新婚家庭への家賃補助制度の創設、二つ目は住宅資金融資利子補給制度による持ち家の促進、三つ目は住宅取得に係る減税の拡充などのファミリー向けの施策であります。さらに、四つ目はシルバーハウジングプロジェクトの推進、五つ目は高齢者向け優良賃貸住宅制度の推進などの高齢者対策であります。これら生活大国実現のための諸施策について、総理の御見解をお伺いしたいと思います。
 さらに、住宅供給を促進する施策として、定期借地権つき住宅の普及を図ることも重要であります。そのために、普及の足かせとなっております定期借地権の底地の評価額を普通借地権並みに引き下げることが必要であります。政府としても早急に結論を出すべきだと考えますが、総理の見解をお伺いしたいと思います。
 以上、建築基準法の改正に関連して、政府の住宅政策について種々お伺いしましたが、総理初め関係閣僚におかれましては、今後とも、生活者の視点に立った、安心で豊かさが実感できる住宅政策を遂行していただくよう要望し、私の質問を終わります。(拍手)
〔内閣総理大臣橋本龍太郎君登壇〕

○内閣総理大臣(橋本龍太郎君)
 井上議員にお答えを申し上げます。
 まず、生活大国を実現する上での住宅政策の現状及びあるべき住宅政策という問いかけをいただきました。
 住宅というものが、人生を過ごす上で大切な生活空間であり、美しい町並みを構成する、そういった意味でも重要な要素であることは、そのとおり、私もそう思います。そして、生活大国を実現していくためには、特に大都市を中心に立ちおくれた住宅事情を改善していく必要があることも御指摘のとおりです。また、今後の少子・高齢化というものを展望しながら、国民一人一人が、適正な負担のもとに、それぞれの人生設計にかなった住まい方を自由に選択し、実現できるよう住宅政策を進めていく必要があると考えております。
 次に、阪神・淡路大震災関連のお尋ねがございました。
 政府としては、これまでも被災者の方々の生活支援のために、公営住宅の大量供給とその家賃の大幅な引き下げ、阪神・淡路復興基金を活用した生活再建支援金の給付に対する地方財政措置など、さまざまな支援策を講じてまいりました。今後とも、政府としては、被災者の生活再建に向けてこれらの支援策を着実に実施していきたいと考えております。
 また、中間検査導入の背景についてのお尋ねがございました。
 阪神・淡路大震災の被害調査によりますと、倒壊等の被害に至りました建築物の多くのものは古いものでありましたが、施工の不備が原因と見られる新しい建築物も含まれていたという指摘がございます。こうした指摘も念頭に、このような被害の発生を防ぐために中間検査制度を導入することといたしました。
 次に、幾つかの御提言を含め、少子・高齢社会に対応した住宅政策というお尋ねをいただきました。
 国民がライフステージや人生設計にかなった住まい方を選択することができるようにすること、これが重要な点だと認識しております。このため、高齢の方々が不安なく住み続けられるよう、福祉施策と連携した住宅政策の拡充やバリアフリー住宅の整備、あるいはゆとりを持って子供を育てることのできる住宅整備に努めてまいりたいと考えております。
 次に、定期借地権の底地の評価、恐らく相続税評価のことだと思いますけれども、これについての引き下げを御提言いただきました。
 しかし、私は、この評価を政策的に引き下げることは課税の公平などの観点から適当ではない、そう思います。しかし、いずれにいたしましても、定期借地権住宅に係る底地の評価につきましては、現在、定期借地権等の実態調査を行っておりますけれども、こうしたものなどの結果も踏まえて、一層の適正化の観点から、普通借地権の底地の評価なども参考の要素にしながら検討を進めて、できるだけ速やかに結論を得るようにしていきたいと考えております。
 残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁を申し上げます。(拍手)
〔国務大臣瓦力君登壇〕

○国務大臣(瓦力君)
 井上議員にお答えいたします。
 適正な住居費負担や優良な住宅につきましては、それぞれの世帯構成や価値観などによって異なりまして、一律に論ずることは困難でございますが、例えば住居費負担につきましては、勤労者世帯の平均年収の五倍程度を目安に住宅取得が可能となるよう各種対策を講じているところでございます。
 また、目指すべき住宅の目標につきましては、世帯構成に応じたゆとりある住宅規模、良好な住環境を備えていること等が望まれることから、住宅建設五カ年計画におきましては、居住水準等の誘導すべきガイドラインを定めているところでございます。
 中間検査制度の対象の限定等についての御質問でございますが、建築物の安全性のためには適切に施工がなされることが基本と考えており、このため、工事監理の責任の明確化、手続の厳格化等を図る一方で、これとあわせて、新たに中間検査制度を導入することといたしているものでございます。
 その実効性を上げるため、その対象を真に必要なものから実施することといたしておりまして、こうした観点から、戸建て住宅等につきましては、工事監理等が比較的簡易に行い得ることを勘案いたしまして、建築士による的確な工事監理がなされることを前提に、中間検査を簡略化することとしているものでございます。
 的確な工事監理の実施と中間検査制度が相まって、建築物の安全性の確保が図られることになると考えております。将来的には、今回の改正案の施行状況を踏まえつつ、適宜、総合的に検討してまいりたいと考えております。
 次に、違反建築物対策についての御質問でございますが、建築規制制度の実効性を確保し、建築物の安全性と良好な市街地環境の確保を図るためには、違反建築物対策の充実強化が必要であると考えております。
 今回の改正におきましては、官民の役割分担のあり方を見直し、民間機関が行う道を開くことといたしております。これによりまして、行政は違反是正、処分等の本来行政でしかできない業務に重点を置くことができ、違反対策の推進のための体制の強化に資するものであり、この体制のもと、総合的な違反対策を進めてまいる所存でございます。
 また、建築確認を行う民間機関の公正、中立性の確保についてお尋ねでございますが、指定に当たり、役職員の構成や業務内容の中立性を審査するほか、役職員に公務員と同様の罰則を適用する措置を講ずることといたしております。民間機関の行う建築確認につきましては、行政庁に対する報告義務を課し、不適法なものについてはその効力を失わしめる等の措置を講じ、違反建築物の防止に万全を期す所存でございます。
 御指摘の公正、中立性の確保につきましては、制度の根幹にかかわることでありまして、今後、その運用方針について、各界の御意見を参考にしつつ慎重に検討してまいりたいと考えております。
 最後に、建築基準の性能規定化に伴い導入される検証方法と安全性の担保についての御質問でございますが、検証方法につきましては、建築物に係る既に確立された科学的、技術的知見によることを基本とすることといたしております。具体的には、例えば、厳格な実用試験を経て既に確立し国際的に普及しているなど、科学的、技術的チェックを経たもののみを、政令及び告示によりまして明確に示すことといたしております。
 したがいまして、このような検証方法の内容、手続両面の厳密さを踏まえれば、必要な安全性は当然に確保できるものと考えております。
 以上でございます。(拍手)