衆議院議員 井上義久
平成10年4月3日 衆議院商工委員会

○井上(義)委員
 新党平和の井上義久でございます。
 私は、日本は資源小国である、やはり科学技術で立ち行く以外にない、こういうことで大学も工学部を選択した一人でございまして、科学技術創造立国ということについては大変格別な思いを持っているわけでございます。
 もう大臣御承知のように、平成七年に科学技術基本法ができまして、平成八年から十二年までの五年間に科学技術基本計画によって約十七兆円の投資をする、こういうことが閣議決定され、今進んでおるわけでございます。科学技術にとっては極めて追い風で、関心のある者としては非常に喜んでいるわけでございます。
 ただ、科学技術創造立国ということを実現するためには、科学技術が研究にとどまっている、論文が幾らできても国は立ち行かないわけでございまして、科学技術創造立国実現のためには、その科学技術というものがきちっと産業に移転されていなければいけない。しかも、その産業が、国際的な競争力を持つ新しい産業というものがそのことによって生み出されなければいけない、こう思うわけでございますけれども、やはり現状は、科学技術の産業界に対する移転についても、あるいはその移転された技術が国際競争力を持った新産業に育つという意味でも、まだまだ問題がたくさんあるわけでございます。
 そういう面からいいますと、この大学等の技術移転促進法が今回上程をされまして、大学の研究成果というものが産業界に技術移転をするような新しい仕組みができるということについては、私は、ようやくここまで来たかなと。特に大学は、研究者六十七万人のうちの二十四万人が大学にいるわけでございますし、それから、日本の科学技術予算は年間で約十五兆あるわけでございますけれども、そのうちの約二割の三兆円が実は大学の科学技術研究予算になっているわけでございまして、そういう意味からいいますと、ようやくここまで来たかな、そんな思いがしているわけでございます。
 初めに、やはり通産大臣、一番踏ん張っていただかなければいけないわけでございますし、この科学技術創造立国ということについて、今日本の現状をどのように認識をされ、また将来どのような方向を考えていらっしゃるのか、大臣の基本的なお考えを伺っておきたいと思います。
〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕

○堀内国務大臣
 お答えを申し上げます。
 ただいま井上委員のお話のとおり、科学技術の創造立国の実現というものに対しては、大変重要な問題でありますし、今までこの問題に大変お取り組みをいただいてまいりました委員に対しても、心から敬意を表する次第でございます。
 本格的な高齢化社会がやってまいりますし、また大競争時代が到来する中でございますので、活力のある豊かな国民生活を実現をさせなければいかぬということになりますと、委員のおっしゃるとおり、技術革新を通じて新たな産業が次々と生まれるということが不可欠なことだと思います。そのためには、技術のシーズと申しますか、種の創出を促進するだけではなくて、まさに先生の御指摘をいただいたように、技術の移転及び産業化の促進ということ、そのための環境整備が重要になってくる、それを政策的に一体化しながら持っていこうというのが科学技術創造立国の実現に向かっての一歩だろうというふうに思っております。
 具体的には、この法案によりますと、大学などから産業界への技術移転、これを促進することを初めといたしまして、産学官、みんなの連携のもとによる技術開発の推進あるいは研究開発環境の整備、研究開発に係る税制の措置の一層の充実、こういう総合的な施策を行いながら、科学技術創造立国へ向かっての大きな基盤をつくってまいりたいというふうに思っております。

○井上(義)委員
 少し具体的な問題に入らせていただきますけれども、まず、この法案が成立をいたしますと、文部大臣、通産大臣が実施指針をつくって公表する、こういうことになっておるわけでございます。関係行政機関の長と協議をするということでございますけれども、この技術移転事業者といいますかTLO、各大学で大分盛り上がっておるわけでございます。私は、大学の中でこれだけこういうことに対して機運が盛り上がってきたということは画期的なことでございまして、今というチャンスを逃したらもうなかなかこういうことが実現するチャンスがなくなってしまうのじゃないかというふうに思っておるわけでございまして、法案成立後どのぐらいの時期にこの実施指針が公表されるのか、できるだけ速やかにやるべきだと思いますが、どうでしょうか。

○江崎政府委員
 御指摘の実施指針でございますけれども、これは、移転事業の基本的な方向ですとか、あるいは事業内容とか実施のやり方について定めるわけでございますけれども、この法律が公布の日から三カ月以内に施行するというふうになっているわけでございます。したがいまして、施行後速やかにこの実施計画の承認手続を行いたいというふうに思っているものですから、実施指針の公表につきましては、できるだけ速やかに、つまり施行後ほとんど時間を置かないようにして公表したいというふうに思っております。

○井上(義)委員
 この実施指針が公表された後に、それぞれのTLOが実施計画をつくって文部大臣、通産大臣に承認を求める、これが承認されて初めて産業整備基金等による債務保証とか助成金が支出されるということになるわけであります。文部大臣、通産大臣に実施計画を出すということが法律にあるのですけれども、窓口があちこちにあったり、どうも手続が煩雑だったり、あるいは審査事務がおくれてなかなか結論が出なかったりと、何しろこれに携わっている皆さん、大学の先生方でございますので、余りそういう事務が煩雑ですと、せっかくのやる気をそぐようになってしまうのじゃないか、こういうことについて、できるだけ簡素に、計画が出たら速やかに承認をするような配慮が必要だと思いますが、どうなっていますか。

○江崎政府委員
 実施計画の承認の問題でございますけれども、文部省と通産省が密接な連携をとりながら処理をしたいというふうに思っておりまして、例えば、申請に当たりましてヒアリングなどがあると思うのですが、二度手間にならないようにしまして、両省で合同してヒアリングをするというふうな工夫をしたいと思っておりますし、また、申請の手続の簡素化に努めるのは当然だと思っておりまして、申請のフォーマットなどはいずれ決めるわけですけれども、必要最小限のものにしたいというふうに思っております。それから、審査の期間でございますけれども、これも一カ月程度を私ども今考えておるところでございます。

○井上(義)委員
 この実施指針、それから実施計画の承認というスケジュールで、公布後速やかにというお話でしたけれども、やはり十月一日ぐらいということを想定していろいろ計画を、各大学いろいろ聞いてみますと、お考えになっているようなところがあるわけでございまして、もちろん、法律が通らなければ何とも言えないわけでありますけれども、その辺の期日については、はっきりできないところがあるかもしれませんけれども、十分考慮してやっていただきたいと思うのです
が、どうでしょうか。

○江崎政府委員
 先ほど申し上げましたように、公布後三カ月以内に施行するということでございますので、例えば今国会にこの法案を通していただければ、三カ月以内には公布されるわけでございますし、今おっしゃった十月一日を想定しているというような場合には、十分それに間に合うようにいろいろな指針等を公表し、手続も迅速にやりたいというふうに思っております。

○井上(義)委員
 次に、このTLOを設立するに当たっては、やはり一番の問題は人材の確保ということじゃないか、こう思うわけでございます。
 TLOの運営業務は非常に多岐にわたるわけでございまして、特に研究成果の評価、それから特許権の取得、それからさらにはマーケティングといいますか、そのシーズが技術移転されて産業化された場合にどの程度の市場性があるのか、それからやはり、TLO自体もそうですし、それからTLOから技術移転する企業などにとりましても、資金の確保という問題、それから、技術移転されれば、これは当然ロイヤルティーという形で収入が入ってくるわけでありますけれども、その財務管理等々、そういう意味で、特に研究成果の評価といいますか、いわゆる技術の目ききといいますか、この技術は本当にどのぐらい産業化の可能性があって、どのぐらいの利益を生み出し得るのかというような、そういう人材が一番必要なんですけれども、どうもなかなかそういう人が今までの日本の社会で育ってきていないのじゃないか。
 アメリカの例などを見ますと、一つの機関に十人から十五人ぐらいのそういう専門スタッフがいてやっているというようなことも聞くわけでありますけれども、そういう人材の確保ということについて、通産省はどのようにお考えでしょうか。

○江崎政府委員
 この技術移転事業が成功するかどうかというかぎは、まさにふさわしい人材を確保できるかどうかということにかかっているわけでございます。
 今先生御指摘のように、必要な人材の備える能力としまして、技術の内容を正確に把握するとか、あるいは市場性の観点からその技術を評価するとか、あるいはこれを適正な企業に譲渡する、つまりマーケティングの能力、こういったものが要請されるわけでございますけれども、現在の時点で、確かにこうした人材は十分育っていないというふうに私どもも感じております。
 したがいまして、当面、この事業に必要な人材というのは、企業の知的財産の管理部門のOBの方ですとかあるいは知見を持つ大学の教官の方などを期待しているわけでございまして、こういった大学の教官の方々に助言を仰ぐというようなことも考えたいと思っておりますし、また、譲渡した先の企業に対しまして、そうした教官の方々が技術指導するというようなことも期待をしているわけでございます。
 通産省としましても、現在、既に特許庁におきまして特許流通アドバイザー派遣制度というのがございますけれども、この制度をさらに拡充しまして、この移転事業に対しての情報提供を行うようにしたいというふうに思っておりますし、また、この制度の認知度をさらに向上させたいと思っておりまして、それに伴いまして、TLO自身が有用な人材を次第に確保できるようにしたいというふうに考えております。

○井上(義)委員
 これは、通産省として今のようなお話、よくわかるのですけれども、具体的な人材のストックといいますか、ここにこういう人がいる、この人はある一定の期間だったらこのTLOに派遣してもいいよというような、そういうめどといいますか、そういうストック、通産省としてはお考えでございますか。

○江崎政府委員
 先ほど御紹介しました特許流通アドバイザー派遣制度というのがございますが、これも実は企業の知的財産管理部門のOBの方々に何人かお願いをしております。今これは実は十数人なんですけれども、こういった方々をさらに、私ども、企業の方々と接触をしまして、企業を卒業されたり、あるいは途中で移られる方もいると思うのですが、そういうところの方を次第にふやしていきたいなということ。
 それからもう一つは、大学の教官自身の方が、兼業の問題がございますけれども、そういった許可を得まして、TLOなどへ来ていろいろお仕事をしていただくというようなことを考えております。したがいまして、大学の方との接触も深めまして、TLOで事業をしていただくということを考えていきたいというふうに思っております。

○井上(義)委員
 それで、今ちょっとお話が出ましたけれども、きょうは、この大学教官の業務の兼任ということについてちょっとお伺いしたいと思います。
 大学の研究成果、これを事業化しよう、そういう今回の法案の趣旨でありますけれども、それを支援していくためには、国立大学の教官等が経営者として事業化に責任を持つような、技術移転事業を行う企業とかいわゆるTLOの、ある意味では経営に参加をする。いろいろなTLOでは、当然出資をして株主になる。いわゆる百四条兼任でアドバイザー的な役割を果たすということは当然なんですけれども、責任を持つという意味では、役員を兼任するということも必要だと思います。
 それから、諸外国の例、特にアメリカの例なんかを見ますと、やはり技術というのは、例えば特許をとったその特許だけでは企業化というのは非常に難しいわけでございまして、周辺技術を含めてきちっとやらないと、特に中小企業なんかというのはベンチャーとしては立ち上がることはできないわけでございます。そういうことも含めて、ある程度移転先の企業の経営についても責任を持つような、ひいては、そういうことからいわゆるベンチャー型企業、大学の中からこのベンチャー型企業というものを創造していくというようなことまで含めて考えないと、TLOというのはなかなか成功しないのじゃないか。
 そういう意味で、現状では百四条兼任でしか事実上認められていない。本来、百三条でそういう役員になることはできないように事実上なっているわけでありますけれども、この辺の規制緩和ということをそろそろ考えていかないと、なかなかこの事業は成功がおぼつかないのじゃないかな、こんな思いがするわけであります。これは通産、文部両方に関係していると思いますので、もしわかればぜひ御答弁をお願いしたいと思います。

○雨宮政府委員
 昨年四月から行っておりますのは、例えば、月一回でありますとかあるいは年に数回でありますとか、勤務時間外に技術指導等を行うという場合に兼業していいのかどうかということについて、それはもう本務に支障がなければ構いませんという兼業の許可の仕組みを開いたわけでございます。今の先生のお尋ねは、さらにそれを広げて、TLOの役員でありますとか、あるいはさらに進めてベンチャー企業の役員などとして経営参加ができるかどうか、こういうお尋ねでございます。
 私ども、今当面の検討課題としておりますのは、先ほどの先生の御議論に直接かかわるわけでございますが、いわゆる技術移転機関に技術の目ききというべき適切な人材をどう確保するかということとも関連するわけでございますが、国立大学のある教官が場合によってそれに適しているかもしれない、その場合に、兼業の許可ということができるような方途というものを考えていいのではないかという問題意識を持っているわけでございます。もちろんこれは、公務員としての職務専念義務でありますとか、あるいは公務の適性でありますとか、さまざまな議論との兼ね合いの中で検討すべきことであるわけでございますが、当面の課題としてはそういうことがあるわけでございます。
 ただ、もう一つおっしゃいましたベンチャー企業、これは見方を変えますと、見方と申しますか言葉をかえて申しますと、一営利企業の役員として経営参加する、そういう道を開けという御提言でございますが、これはTLOの場合に比べて、率直に申しまして、問題はやはり少なくないだろうというように考えておるわけでございます。
 議論を突き詰めますと、場合によっては、そこまで一営利企業の経営参加ということをやるぐらいならば、いっそのことやめて、それにどっぷりつかって責任をとってやったらいいじゃないかという議論さえも出る。そういうことでもございますし、全体の奉仕者性というような観点からも甚だ問題は少なくないのではないかという、そういう感じを持っておるわけでございます。
〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕

○江崎政府委員
 基本的には、文部省が今お答えになったのと同じでございます。
 簡潔に申し上げますと、国立大学などの研究者が企業の役員を兼ねるということにつきましては、今お話ございましたように、国民全体の奉仕者であるという公務員としての性格、それから最近議論になっております公務員の倫理の問題、こういったことを留意しまして検討しなければいけないというふうに思っております。ただ、その中でも、特に今回御提案しておりますこの技術移転機関、この役員を兼ねることにつきましては、政府の中でも特に早急に結論を出したい、このように思っております。

○井上(義)委員
 今答弁ありましたように、少なくともTLOの役員については幅広く仕事がしやすいような仕組みをぜひ考えていただきたい、こう思います。
 時間も余りないので、大臣、この法案の目的は技術移転なんですけれども、TLOはまだいいと思うのですけれども、TLOの先、ベンチャー企業ですね、やはりここをどう育てるかということは、通産省としてはもう一方でやっていただかなければいけないわけでございます。
 先ほど中野先生の質問の中にも出ていましたけれども、特許が八十三万件ある、ところが実際には五十六万件、六七%が未利用特許だ。いろいろ話を聞いていますと、特許だけではどうも活用が難しい。その周辺技術を含めて、そういう技術支援というものがなければいけないのじゃないかというのが一つ。
 それから、やはり資金。今いろいろなベンチャーファンドというのがあるのですけれども、聞いてみると、これもほとんど使われていない。使い勝手が悪いのか、どうもシーズがないのか、この辺もちょっとわからないわけですけれども、やはり資金も必要。
 それから、やはり人材の確保。こういうことを抜本的にやらないと、今いろいろなベンチャー施策があるのですけれども、どうも効いてないな、こんな感じがするわけですけれども、大臣、どうでしょう。

○堀内国務大臣
 本当に委員御指摘のとおり、技術と資金、それから人材、この三つがベンチャー企業の支援策の中で重要なことだろう、そうしないとそれが発展していかないということになると思います。
 技術移転先であるベンチャー企業を支援するというときには、技術移転を成功に導くだけではなくて、本法案の中におきましても、中小企業投資育成株式会社法の特例措置を設けておりまして、そこからの資金を出せるようにいたしております。また、通産省としましては、本法律案以外でも、資金の面あるいは人材及び技術に関する総合的なベンチャー支援策というものを推進したいということで取り組みをいたしております。
 具体的に申し上げますと、資金面では、昨年実施をいたしましたが、企業年金だとか、あるいは証券投資信託の投資対象、これにベンチャー株を含めるための運用規制の緩和というものを実現いたしましたので、これからは新しい生まれたばかりのベンチャー企業であっても、この投資信託の対象にすることができるようになっております。また、米国のように、年金資金からのベンチャー企業への資金の供給というものを円滑にさせるために、投資事業組合法案、これを今国会に通産省から出させていただいておりまして、これによって、今までこの組合の有限責任、無限責任の中で非常に運営がしにくかった、出しにくかったものを容易にできるようにいたすことになっております。
 また人材面では、企業の人材確保、社員の士気高揚に資するために、これまたストックオプションの制度の導入というのをいたしましたので、この導入を円滑化する税制措置を本年度から措置をいたしましたので、新しい人が大いに意欲を持ってベンチャービジネスに取り組むことができるストックオプション制度の成果というものが出てくるのではないか。
 こういうような問題を総合的に全部考えてまいりますと、今までと比べますと、これでベンチャー企業の育成を相当達成できるようになるのではないかというふうに考えておりますし、さらにこれからもベンチャー企業の育成のための努力を払ってまいりたいと思っております。

○井上(義)委員
 ちょっと細かな問題になりますけれども、大学で生まれた知的財産をTLOに譲渡する場合、大学の先生、研究者の場合は個人との関係ですからいいわけでありますけれども、いわゆる国有の知的財産をTLOに譲渡する場合に、これは国有の資産でありますからただというわけにはいかないと思いますけれども、これがTLOに対して過重な負担になるようではこの法案の意味はないのじゃないかと思うわけです。
 そういう意味で、いわゆる国有の特許をTLOに譲渡する、負担にならないような形で、できれば対価がゼロで移転されるような仕組みを工夫する必要があるのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。

○江崎政府委員
 この法案によりまして認定を受けた事業者が国から特許権などを譲り受ける場合に、財政法の規定にのっとりまして適正な対価を支払うということになると思います。これは財政法の九条に適正な対価を支払うということになっております。それから、具体的なやり方としては、競売に付すということになろうかと思います。
 それから一方、受ける側の技術移転の事業者の方から見ますと、これは専門家としてその技術を評価する能力を持っているわけでございますので、その技術のシーズの将来性、収益性あるいはみずからの財務状況を勘案しまして、対価が過重かどうかということは御自身で判断されて、その上でその譲渡を受けるかどうかを選択されるということになると思います。
 それから、今御指摘の点に多少関連しますけれども、国有特許を譲り受ける場合には、特許料などにつきましては特例措置を設けまして特許料を免除する。これによりまして、より効率的にTLOが活動できるようにするということにしたいと思っております。

○井上(義)委員
 それから、文部省にちょっとお伺いしますけれども、いわゆるTLOがライセンシングによって得た収益、これを大学とか研究室に還元をする、これが大きな目的の一つになっているわけです。今までの研究者とか研究室の場合は奨学金という形で戻せば問題ないわけなんですけれども、大学によっては、これをいわゆるファンドとして、例えば大学支援機関みたいなものにストックして、大学全体の研究ニーズに適切に、また適切な時期に配分していこう、こういう考えを持っている大学があるのですね。
 株式会社の収益ですから、一たんこれをそういう支援財団みたいなところに移す場合に、当然これは課税の問題が出てくると思うのですけれども、研究成果を還元していくという意味ではここはひとつ配慮が必要なんじゃないか、こんなふうに思うのですが、そういう仕組みは考えられるのかどうか。

○雨宮政府委員
 御指摘のように、この法案で御提示申し上げている仕組みがうまくいくかどうかの一つの重要な要素として、TLOからの大学へのロイヤルティーなどの還元というものが非常に重要な要素であると思うわけでございます。
 その場合にどういうような形で還元がなされるかということについては、大学それから研究者、TLO、それからその特許の実施企業との間の契約の定めでいろいろなバリエーションがあろうかと思うわけでございます。そのバリエーションの中で、今先生御指摘のように、寄附金税制とか、現存の税制でどう対処したらいいのか、あるいは、もし足りなければどういう税制を考えていくのがいいかどうか、そこは今後よく検討してまいりたいと思っております。

○井上(義)委員
 ぜひ配慮をお願いしたいと思います。
 最後に、きょうは特許庁に来ていただいていると思いますけれども、科学技術創造立国ということを考えますと、技術の産業に対する移転、それが国際競争力を持った新産業ということになると、やはり国際特許といいますか、これが一番重要なポイントになるのじゃないか、こう思うわけです。
 アメリカなんかでは特許の国内出願よりも海外出願の方が多い。国家戦略として海外特許を取るということをやっているわけです。そういう面では、日本の場合は極めて弱い。科学技術創造立国ということを標榜する以上、国家戦略としてこの海外特許というものを積極的に取るような何らかのインセンティブがないと極めて厳しい。
 いろいろな話を聞きますと、特にパテントローヤー、弁護士で技術がわかって英語ができる人は日本には数人しかいない、これではとてもじゃないけれども国際競争には勝てないという指摘もあるわけでございます。私の先輩なんかは、科学技術創造立国ということで十七兆円の金を使うのだったら、その五%ぐらいは海外特許取得のために使え、それがあって初めて科学技術創造立国だ、こういう指摘をする人もいるわけでございます。特許庁としての基本的な考え方をお伺いして、質問を終わりたいと思います。

○荒井(寿)政府委員
 ただいま御指摘ございましたように、アメリカに比べて日本の方は外国で特許を取るということはかなり少ないわけでございまして、そこについて何とかしていかなければいけないという御指摘、まことにそのとおりではないかと思っております。
 日本の大学の先生方あるいは企業の方が外国で取るということについての意識、認識がまだ低いわけでございますので、私ども、今世界の様子を御説明するということをやっております。さらにまた、外国の制度がわかりにくいということでなかなかそこまでいかないという方もおられますから、外国の特許庁の長官に来てもらって国内で説明会を開くとか、あるいは日本の特許庁のホームページを当たっていただければ外国の特許庁の仕組みがわかるとか、あるいは外国政府に働きかけるとか、いろいろ努力はしておりますが、これで十分と思っているわけではございません。今御指摘のようなしっかりしたインセンティブを与えること、どういうものがいいかは、これからよく検討してまいりたいと思います。

○井上(義)委員
 以上で終わります。